1. 導入:なぜ今、Dockerが必要なのか?
Web開発やシステム運用に携わる皆さんにとって、「環境構築」は常に悩みの種でした。
- 「先輩のPCでは動くのに、自分の環境ではエラーが出る」
- 「本番環境と開発環境でOSやライブラリのバージョンが違って動かない」
このような「環境依存によるトラブル」を根本的に解決するのが、今回紹介するDockerです。
この記事では、Dockerの基本的な仕組みから、イメージやコンテナといった重要な用語、そして実際の開発で役立つ基本コマンドまでを、初心者にも分かりやすく解説します。
2. Dockerとは何か? コンテナ技術の基礎知識
Dockerとは、コンテナ型仮想化技術を利用してアプリケーションとその実行環境全体を隔離・パッケージ化するためのプラットフォームです。
2.1. コンテナと仮想マシンの違い
従来、環境を隔離する方法として**仮想マシン(VM: Virtual Machine)**が使われてきましたが、Dockerのコンテナはこれとは異なります。
| 特徴 | コンテナ (Docker) | 仮想マシン (VM) |
| OS | ホストOSのカーネルを共有 | OS全体(ゲストOS)を持つ |
| 起動速度 | 非常に高速 (数秒) | 比較的遅い (数分) |
| リソース | 非常に軽量 | 重い(CPU、メモリを多く消費) |
| 用途 | アプリケーションの実行環境隔離 | OSレベルでの完全な隔離 |
コンテナはゲストOSを持たないため、非常に軽量で起動が速いのが特徴です。アプリケーションに必要なファイルと設定だけをパッケージ化するため、どこでも同じように動作します。
2.2. Dockerの主要な構成要素(3つの用語)
Dockerを理解するために、特に重要な以下の3つの用語を覚えましょう。
- ① イメージ (Image):
- コンテナを起動するための設計図やテンプレートとなるファイルです。
- アプリケーション本体、ライブラリ、OSの必要な設定など、実行に必要な全てが含まれています。
- ② コンテナ (Container):
- イメージを元に、実際に起動・実行された隔離された実行環境です。
- アプリケーションが動作する実体であり、停止・起動・削除が容易に行えます。
- ③ Dockerfile:
- イメージを作成するための手順を記述したテキストファイルです。
- 「どのOSをベースにするか」「どのファイルをコピーするか」「何をインストールするか」などを記述します。
3. Dockerの基本的な使い方とコマンド
Dockerの基本的なワークフローは、「Dockerfileでイメージを作り、そのイメージからコンテナを起動する」という流れです。
3.1. イメージの作成(docker build)
Dockerfileが置かれているディレクトリで実行します。
Bash
docker build -t [イメージ名]:[タグ名] .
# 例: docker build -t my-web-app:1.0 .
-t(tag)オプションでイメージに名前とバージョン(タグ)をつけます。- 最後の
.は、Dockerfileの場所(カレントディレクトリ)を示します。
3.2. コンテナの起動(docker run)
作成したイメージからコンテナを起動し、アプリケーションを実行します。
Bash
docker run -d -p [ホストポート]:[コンテナポート] [イメージ名]
# 例: docker run -d -p 8080:80 my-web-app:1.0
-d:コンテナをバックグラウンドで起動します。-p:ポートフォワーディングを設定します。(例:PCの8080番ポートへのアクセスを、コンテナ内の80番ポートに接続)
3.3. その他の基本操作
| コマンド | 用途 |
docker ps | 実行中のコンテナ一覧を表示します。 |
docker stop [コンテナID] | 実行中のコンテナを停止します。 |
docker rm [コンテナID] | 停止したコンテナを削除します。 |
docker images | ローカルにあるイメージ一覧を表示します。 |
docker rmi [イメージID] | イメージを削除します。 |
4. まとめ:Dockerで得られる恩恵
Dockerは、開発者の「環境構築の苦労」を解消し、より本質的な開発に集中できる環境を提供します。
- 環境の統一: 開発者間、開発/テスト/本番環境間で、完全に同じ実行環境を提供します。
- 再現性: Dockerfileさえあれば、いつでも誰でも同じ環境を再現できます。
- 迅速なデプロイ: 開発したコンテナイメージは、どこでもすぐにデプロイして実行できます。
まずは簡単なWebアプリケーションをDocker化することから始めて、Dockerの便利さをぜひ体験してください。

コメント